切削加工や研削加工をおこなった際に、工作機械から発生する『スラッジ』。スラッジを放置していると、さまざまなリスクが生じてしまいます。
そのため、スラッジ回収は必要不可欠な作業となりますが、どのような機械を利用すればいいのか悩んでいる方も多いでしょう。
そこで今回は、スラッジ回収におすすめの装置について解説します。スラッジを回収せずに放置するリスクなども解説するため、参考にしてください。
また、以下の記事ではクーラント濾過装置導入でおすすめのメーカーを紹介していますので、気になる方はぜひ参考にしてみて下さい。
スラッジとは
工作機械で金属などを切削加工・研削加工する際に発生する微細な切粉が、スラッジです。
これは、工作機械の稼働中に、工具と材料が摩擦することで発生します。加工中は、機械を冷やしたり滑りを良くしたりするクーラント液を使用しますが、この液体の中を漂う微細な切粉がスラッジになるのです。
クーラント液の流れが速いうちは、スラッジは液体の中に漂っています。しかし、流れがゆっくりになると、スラッジに含まれる油分が多い場合は液面に浮き、油分が少ない場合は底に沈むのです。
スラッジは機械を使っている間ずっと発生し続けます。そのままにしておくとクーラント液の中にどんどん溜まっていき、機械の故障などさまざまな問題を引き起こすのです。
スラッジを回収せずに放置するリスク
次に、スラッジを回収せずに放置した時のリスクを解説していきます。
それぞれ見ていきましょう。
切削・研削工具の寿命悪化
スラッジが混入した状態で加工を続けると、スラッジが研磨剤のように作用して、工具が余計に削れてしまいます。これは、本来の削り方とは違う形で工具が削れていくため、工具の寿命を大幅に縮めてしまうでしょう。
また、スラッジがクーラント液の中に溜まっていくと、クーラント液が本来持っている冷却・潤滑性能が弱まります。これは、スラッジがフィルターを詰まらせたり、クーラント液の成分と反応したりするためです。
クーラント液の冷却・潤滑性能が弱まると、工具にかかる摩擦や熱が大きくなり、工具が早く摩耗してしまいます。さらに、大きなスラッジや硬いスラッジが工具にぶつかると、工具が欠けたり折れたりする可能性もあるでしょう。これは、工具が使えなくなる直接的な原因となります。
悪臭発生の原因になる
スラッジをそのままにしておくと、悪臭が発生する主な原因はいくつかあります。スラッジは微生物(細菌やカビなど)にとって、格好の住処です。特に、水溶性のクーラント液に混ざったスラッジは、微生物がどんどん増えるのに最適な環境を作ってしまいます。
また、スラッジが溜まっていくと、その中は酸素が少ない状態です。この状態で微生物が有機物を分解すると、硫化水素、アンモニア、メタンなどの悪臭成分が発生します。これらのガスは、腐卵臭、糞尿臭、下水臭など、不快な臭いの原因へと繋がるのです。
さらに、スラッジがクーラント液に混ざったまま放置されると、クーラント液自体も腐敗しやすくなります。腐敗したクーラント液は、微生物の繁殖をさらに促進し、悪臭を増幅させるのです。
その他にも、スラッジに含まれる油分が酸化することで、酸っぱい臭いや油っぽい臭いが発生することもあります。
機械に不具合を発生させる
スラッジを放置すると、機械のさまざまな箇所で不具合が発生するかもしれません。
スラッジが潤滑油に混ざると、潤滑油の粘り気や流れやすさが変わり、滑りを良くする力が弱まります。そうすると、機械の部品同士の摩擦が大きくなり、部品がすり減ったり、熱でくっついて動かなくなったりする原因となるのです。
スラッジがクーラント液に混入すると、クーラント液の冷却性能が弱まります。これは、機械部品の温度が上がり、熱で膨張して大きさが変わったり、形が変わったり、熱でくっついて動かなくなる原因となるのです。
スラッジが配管やフィルター、オイル穴などを詰まらせると、潤滑油やクーラント液の流れが悪くなり、潤滑不良や冷却不良を引き起こします。また、油圧機器では、油圧の回路がうまく動かなくなったり、故障したりする原因になるでしょう。
スラッジに含まれる硬い粒(金属粉や研磨粉など)は、研磨剤のように作用して、機械部品を早くすり減らしてしまいます。特に、精密な部品は、スラッジの影響を受けやすく、早く壊れてしまう可能性があるので注意が必要です。
スラッジに含まれる水分や酸性の物質は、機械部品を錆びやすくします。特に、鉄でできた部品は錆びやすく、強度が弱くなったり、うまく機能しなくなったりするかもしれません。
スラッジが機械の可動部に付着すると、動きが悪くなったり、止まってしまったりする原因になります。たとえば、ギアの歯にくっつくと、歯車の噛み合わせが悪くなり、大きな音や振動が出たり、歯車が壊れたりするでしょう。
品質低下の原因になる
スラッジが加工箇所に付着すると、加工した表面に傷や凹凸ができ、表面がざらざらになってしまいます。特に、研磨のようにとてもきれいな表面が求められる加工では、スラッジが付くことは大きな問題につながる可能性があるでしょう。
スラッジが工具や加工する材料に付着することで、工具と材料の間の距離が変わってしまい、仕上がりの大きさに誤差が出てしまうこともあります。特に、精密な部品を作る場合は、寸法精度の低下は製品の機能に直接影響するでしょう。
スラッジがクーラント液に混ざった状態で加工を続けると、スラッジが研磨剤のように作用して、工具が余計に削れてしまいます。工具がどんどん削れていくと加工の精度が悪くなり、大きさの誤差が出たり、表面がざらざらになったりします。
スラッジがクーラント液の中に溜まると、クーラント液の冷却・潤滑性能が低下します。冷却不足は、加工中に熱が発生して材料が膨張したり変形したりしてしまい、仕上がりの大きさや形に影響があるでしょう。
また、潤滑不足は、工具と材料の間の摩擦が大きくなり、加工面が熱くなったり、熱でくっついてしまったりして表面の品質が低下します。
清掃作業が大変
放置されたスラッジは、乾燥したり、油分と混ざって固まったりします。特に、油分を含んだスラッジは、時間が経つと粘着性が増し、機械の表面や隙間にこびりついて落としにくくなってしまうでしょう。
一度固まってしまうと、ヘラやブラシなどで物理的に剥がし取る必要があり、非常に手間がかかります。スラッジは、機械の稼働中に飛び散ったり、クーラント液の流れに乗ってさまざまな場所に拡散したりするかもしれません。
放置すればするほど、拡散範囲は広がり、清掃箇所が増えてしまいます。狭い隙間や手の届きにくい場所にも入り込んでしまうため、清掃作業が大変になるでしょう。
また、スラッジを放置して発生する悪臭は、清掃作業自体を不快なものにするだけでなく、作業環境全体の悪化にもつながります。悪臭の原因物質が清掃後も残り、完全に臭いを取り除くのが難しくなる場合もあるでしょう。
スラッジを回収するならクーラントろ過装置がおすすめ
ここまで、スラッジを回収しないリスクについてみてきましたが、スラッジの回収にはクーラントろ過装置がおすすめです。
クーラントろ過装置は、汚れたクーラント液からスラッジを取り除き、きれいになった液を再び機械に戻す装置です。この循環によって、クーラント液は常にきれいな状態に保たれ、加工の品質向上や工具の長持ちにつながります。
クーラントろ過装置にはさまざまな種類があり、それぞれ得意分野が異なります。
- カートリッジフィルター
- 遠心分離機
- サイクロンフィルター
- マグネットセパレーター
- ドラムフィルター
カートリッジフィルターは、細かいフィルターでスラッジをしっかりキャッチし、高いろ過精度を誇ります。遠心分離機は、遠心力を使ってスラッジを高速で分離し、大量のクーラント液の処理が可能です。
サイクロンフィルターは、旋回する流れを使って、比較的大きな切粉を取り除くのに向いています。マグネットセパレーターは、磁石の力で鉄系のスラッジを取り除く方法です。他の方法と組み合わせて使うことが多くあります。
ドラムフィルターは、回転するドラム状のフィルターでスラッジをキャッチし、連続運転で大量処理が可能です。どの装置を選ぶかは、加工方法やスラッジの種類によって変わります。
クーラントろ過装置のおすすめメーカー
ここでは、クーラントろ過装置のおすすめメーカーを2つ紹介します。
それぞれ見ていきましょう。
濾過精工株式会社
項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 濾過精工株式会社 |
設立年月日 | 2011年9月 |
資本金 | 6,470万円 |
所在地 | 東京都中央区日本橋蛎殻町 1-10-1 ゲーテハウス株式会社内5階 |
電話番号 | 03-6264-8575 |
公式HP | https://www.rokaseiko.com/ |
濾過精工株式会社は、精密機械用クーラントに特化した高性能ろ過システムの開発・普及に取り組んでいる企業です。近年では、精密ろ過装置だけでなく、クーラントタンク製造を含めたクーラントシステム全体を提案しています。
特に、高精度なクーラントろ過システムで知られており、2016年に特許を取得した独自のろ過・逆洗浄技術が最大の強みです。
加工に極めて高度な正確さを要求される分野、たとえばレンズや光学製品、電子部品などの分野で特に効果を発揮できるでしょう。
イースタン技研株式会社
項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | イースタン技研株式会社 |
設立年月日 | 1970年6月 |
資本金 | 5,000万円 |
所在地 | 神奈川県大和市福田6-9-21 |
電話番号 | 046-268-3131 |
公式HP | https://www.eastern-tech.co.jp/ |
イースタン技研は、1970年創立の研究開発型企業です。設計開発から機械製作・修理メンテナンスまで一貫した製造体制を確立することで、高機能かつコストパフォーマンスの高い製品を提供しています。
特に、カートリッジフィルター方式のクーラントろ過装置に強みを持ち、多様な加工ニーズに応える柔軟性が魅力です。クーラントろ過装置は、場所を取らないコンパクト設計のため、小規模な工場でも活用できます。
まとめ
この記事では、切削加工や研削加工で発生するスラッジについて詳しく解説しました。スラッジは、加工中に工作機械から発生する微細な切粉、砥石の粉、加工油などが混ざったもので、放置するとさまざまな問題を引き起こします。
工具寿命の悪化、クーラント液の性能低下と腐敗、清掃作業の増大などの問題を回避し、安定した加工品質と生産性を維持するためには、スラッジの効率的な除去が不可欠です。
適切な対策を講じることで、上記のような問題を未然に防ぎ、安定した生産活動を維持できます。
特に、クーラントろ過装置は、スラッジ問題を効果的に解決するための有効な手段の一つです。加工方法やスラッジの特性に応じて最適な装置を選択し、導入を検討することをおすすめします。