「超硬材とは?」
「超硬材スラッジを除去するには?」
近年の工作機械は技術の進歩により、いっそう高性能な加工が可能となりました。
非常に硬い性質を持つ超硬材の加工も、今では可能になっています。
しかし、超硬材の加工時に発生するスラッジは非常に細かい粒子となっており、10μm以下のものもあるでしょう。
そのため、発生する超硬材スラッジに、悩んでいる方もいるはず。
そこで今回は、超硬材の特性から超硬材スラッジの除去方法について解説します。
おすすめのクーラントろ過装置メーカーも紹介しているため、参考にしてください。
また、以下の記事ではクーラント濾過装置導入でおすすめのメーカーを紹介していますので、気になる方はぜひ参考にしてみて下さい。
超硬材とは
超硬材とは、一般的な合金よりも極めて硬度を高めた合金のことで、超硬合金とも言います。
炭化タングステンや炭化チタン等の硬質な金属炭化物粉末を、コバルトやニッケル等の鉄系金属粉末で焼結して生成します。
低温時の硬さはもちろん高温時の硬さにも優れており、熱伝導率が大きく耐熱性に優れるなどが特徴です。
また、超硬材の主な材料であるタングステンは、融点が2,900℃と非常に高温なため『粉末冶金法』という特殊な方法で製造されます。
粉末冶金法とは、鉄等の様に熔解や、削ったりして所用形状を得るのではなく、金属粉末をプレスした後、焼き固めて所用形状を得る方法です。
超硬材においては、タングステンの粉末に結合剤としてコバルトを混ぜ合わせ、プレス成形した後に焼結することで製造されます。
超硬材の使用用途
超硬材は、主に金属加工に使用する工具や金型として使用されます。
工具や金型には、加工する材質より数倍の硬さが求められるため、硬度に優れた超硬材は金属加工に適している素材といえるでしょう。
超硬材が使われている切削工具は「超硬工具」と呼ばれており、高度を活かした高精度な加工が特徴となります。
また、摩耗しにくく長持ちするため、加工コストを抑えることも可能です。
ただし、衝撃に対する強度は低いため、衝撃が加わると欠けやすい点には注意が必要となります。
超硬材を加工するには
超硬材は非常に硬いため、通常の方法で加工するのは困難です。
超硬材の加工は、基本的に下記の方法が用いられます。
- ダイヤモンド砥石を使った研削加工
- 放電加工
ダイヤモンド砥石を使った研削加工は、超硬材以上に硬いダイヤモンドを多く含有した砥石を活用して行う加工方法です。
ただし、ダイヤモンド砥石とはいえ超硬材は硬度が高く、砥石の摩耗は激しくなります。
条件を整えることで加工自体は行えますが、送り速度を小さくする必要があるため加工時間が長くなりやすい点に注意が必要です。
放電加工は、電極と被削材の間で放電を繰り返して研削する加工方法になります。
導電性を備えている被削材なら、硬度を問わずに加工可能です。
一方で、超硬材の材料として使われているタングステンは融点が非常に高く、加工に必要なエネルギーが大きくなるため、加工精度が落ちる可能性には注意してください。
超硬材の研削加工時に発生するスラッジ
超硬材を研削加工する際に、微細なスラッジが発生します。
上記のスラッジが、クーラント液中に混入することで様々な問題を引き起こしてしまうでしょう。
例えば、超硬材のスラッジが研削工具を削ってしまい、摩耗しやすくすることで、工具の寿命を短くしてしまいます。
また、クーラント液面に浮上したスラッジは、やがてタンクの表面を覆い、悪臭発生の原因にもなるでしょう。
スラッジは、上記のような悪影響を引き起こしてしまうため、速やかに除去する必要があります。
超硬材スラッジ除去の重要性と放置によるリスク
超硬材を研削加工する際に発生するスラッジは非常に微細で高密度なため、適切に除去しなければさまざまな問題を引き起こします。
たとえば、工具や設備の摩耗を早め、クーラント液の劣化を促進させることで、作業効率や生産コストに大きく影響します。
さらに、加工精度の低下によって不良品が増加し、品質面でのリスクも無視できません。
ここからは、超硬材スラッジを放置することで生じる具体的なリスクについて見ていきましょう。
一つずつ詳しく解説します。
研削工具や設備の寿命を縮める恐れがある
超硬材スラッジは非常に硬く微細なため、研削工具や設備内部に付着すると摩耗が進みやすくなります。
これにより工具の切れ味が落ち、交換頻度が増加するほか、研削盤やポンプなどの設備寿命も短くなるリスクがあります。
また、蓄積したスラッジが配管やノズルを詰まらせることで、機械トラブルの原因になる場合も。
こうしたトラブルを未然に防ぐためには、ろ過装置によるスラッジ除去が重要です。
クーラント液の劣化や悪臭の原因になる
スラッジを除去せずにクーラント液に蓄積させておくと、液の性質が変化し、冷却や潤滑といった本来の機能が低下します。
さらに、液面に浮いたスラッジが酸化・腐敗し、悪臭の原因になることもあります。
このような状態が続くと作業環境が悪化し、作業者の健康や快適性にも影響を与えかねません。
クーラント液を清潔に保ち、長持ちさせるためにも、定期的なろ過・清掃が欠かせません。
製品の加工精度や品質が低下するリスク
クーラント液に混入したスラッジが加工面に付着すると、仕上がり面に傷が入ったり、寸法精度が乱れたりと、製品品質に悪影響を与えます。
とくに、ミクロン単位の精度が求められる高精度部品では、スラッジの影響は致命的です。
結果として再加工や廃棄が発生し、生産性の低下やコストの増加にもつながります。
安定した品質を維持するためにも、スラッジの徹底した除去が重要です。
超硬材スラッジを除去するクーラントろ過装置
超硬材スラッジを除去するには、定期的なメンテナンスも重要ですが、クーラントろ過装置を導入するのもいいでしょう。
クーラントろ過装置を導入することで、日々発生するスラッジを効率よく回収・除去することが可能です。
そのため、クーラント液の寿命を縮めたり、工具を傷つけるといった恐れもなくなります。
また、クーラントろ過装置によって液中のスラッジをしっかりと回収できれば、フィルターの交換頻度が少なくなり、作業効率の向上にもつながるでしょう。
さらに、クーラント液の交換やタンク清掃の手間も軽減できるため、ランニングコストも削減可能です。
クーラント内のスラッジを効率よく除去したい方は、クーラントろ過装置の導入を検討してください。
クーラントろ過装置の種類
クーラントろ過装置には、下記のような種類があります。
目的や用途に合わせて適切な製品が異なるため、自分に合った製品を見つける参考にしてください。
カートリッジフィルター
カートリッジフィルターは、クーラント液に混入するスラッジを、フィルターエレメントで補修・除去する循環型のろ過装置です。
10μ以下のスラッジにも対応しているため、細かいスラッジをろ過したい方におすすめとなります。
また、他の装置でろ過しきれなかったスラッジを除去する、二次処理としても活用できるでしょう。
ただし、フィルターを通してろ過する関係上、目詰まりによって連続運転ができなくなってしまうこともあります。
そのため、目詰まりを軽減する逆洗浄機能が備わったろ過装置を選ぶのがおすすめです。
プレコートフィルター
プレコートフィルターは、セルロースや珪藻土をろ過助剤として使用し、特殊形状の濾材の表面に緻密な濾過膜を形成させている装置です。
超微細粒子の一部がセルロース繊維や珪藻土の微細孔に吸収されるため、最適なろ過品質に到達します。
また、逆洗浄機能が備わっている装置なら、濾過で汚れた助剤はろ材から剥離させ、脱水後排出されるため、常に一定したろ過性能を維持可能です。
そのため、メンテナンスコストも削減でき、研削工具の長寿命化につながります。
遠心分離機
遠心分離機は、遠心力を使ってクーラント液から異物を分離し、回収する装置です。
フィルター式と違って濾布やフィルター等の消耗品がなく、必要なのは電気やエアーといった動力源のみとなっています。
超硬やセラミック・鋳物などの脆性材に適しており、粗くて大量のスラッジをろ過したい方におすすめです。
ただし、10μ以下の微細なスラッジには対応していないため、注意しましょう。
遠心分離機について詳しく知りたい方は、下記の記事も合わせてご覧ください。
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導入前に確認すべきろ過装置選びのチェックポイント
クーラントろ過装置は、導入することで超硬材スラッジの除去や設備保護に大きな効果を発揮します。
しかし、現場に適した機種を選ばなければ、期待する性能を十分に得られなかったり、メンテナンス性やコスト面での負担が大きくなったりする可能性もあります。
ろ過装置は種類によって対応するスラッジの粒子径や処理能力、設置条件などが異なるため、事前の確認は不可欠です。
ここでは、導入前に必ず確認しておきたい3つのチェックポイントを紹介します。
詳しく見ていきましょう。
チェック①:処理したいスラッジに対応したろ過精度か
ろ過装置を選ぶ際には、処理対象となるスラッジの粒径や性質に適したろ過精度を持つ機種であるかを確認することが重要です。
例えば、超硬材の研削で発生するスラッジは10μm以下の非常に微細な粒子が含まれるため、一般的なろ過装置では十分に除去できないことがあります。
高精度なろ過が必要な場合は、カートリッジフィルターやプレコートフィルターなど、微粒子にも対応できる装置を選定する必要があります。
スラッジの性質に応じたろ過性能を見極めることが、装置導入の第一歩です。
チェック②:維持管理しやすくコストも抑えられる設計か
ろ過装置は導入後の維持管理も重要なポイントです。
フィルターの交換頻度や清掃の手間、ランニングコストが高すぎる装置では、長期的な運用に支障が出る可能性があります。
逆洗浄機能付きのろ過装置であれば、ろ過性能を維持しながらメンテナンス回数を減らすことができ、結果としてコスト削減にもつながります。
また、操作が簡単で扱いやすい設計であれば、現場での管理負担も軽減されます。
性能だけでなく、管理面の負荷にも注目して選定することが大切です。
チェック③:設置スペースや既存設備との互換性があるか
ろ過装置の導入に際しては、設置スペースや既存の加工設備との相性も無視できません。
限られたスペースに大型装置を無理に設置しようとすると、作業動線の妨げになるだけでなく、メンテナンスのしづらさにもつながります。
また、既存のクーラント供給ラインやタンク構造と互換性があるかどうかも重要なチェックポイントです。
コンパクト設計の製品や、カスタマイズに柔軟に対応できるメーカーを選べば、スムーズに導入が進みやすくなります。
ろ過装置導入後の改善効果6つ
超硬材加工などで発生するスラッジは、放置すれば工具や設備への悪影響だけでなく、作業効率や製品品質にも大きく関わってきます。
そこで有効なのが、クーラントろ過装置の導入です。装置を導入することで、目に見えにくい部分の課題が解消され、作業環境やコスト面にも多くのメリットをもたらします。
ここでは、ろ過装置導入後に得られる代表的な6つの改善効果について詳しく見ていきましょう。
- 改善効果①:クーラントの清浄度向上による工具寿命の延長
- 改善効果②:作業効率アップとメンテナンス時間の短縮
- 改善効果③:工場環境の衛生改善と悪臭の抑制
- 改善効果④:クーラント液の寿命延長でランニングコスト削減
- 改善効果⑤:製品の仕上がり品質向上
- 改善効果⑥:安全性の向上と作業環境の改善
一つずつ解説します。
改善効果①:クーラントの清浄度向上による工具寿命の延長
スラッジが混入したクーラント液は、工具の摩耗を早める大きな原因となります。
特に超硬材の微細なスラッジは、刃先をわずかに削り続けることで工具寿命を短縮させてしまいます。
ろ過装置を導入し、クーラントの清浄度を高く保つことで、工具の摩耗を抑制し、寿命を延ばすことが可能になります。
これにより交換頻度が減り、工具費の削減にもつながるでしょう。
改善効果②:作業効率アップとメンテナンス時間の短縮
スラッジによる目詰まりやクーラントの汚れが原因で、装置の清掃やトラブル対応に時間を取られていませんか?
ろ過装置を導入することで、クーラントの清浄状態を長期間維持できるため、設備の不具合も減少し、メンテナンスの手間が大幅に軽減されます。
その結果、本来の加工業務に集中できるようになり、全体の作業効率が向上します。
改善効果③:工場環境の衛生改善と悪臭の抑制
スラッジがタンク表面に溜まり続けると、雑菌が繁殖しやすくなり、悪臭の原因にもなります。
特に気温や湿度が高い季節では、臭気やぬめりが問題となりやすいでしょう。
ろ過装置でスラッジをこまめに除去できれば、クーラント液の清潔さが保たれ、工場内の衛生環境も改善します。
快適な作業空間の確保にもつながる重要な効果です。
改善効果④:クーラント液の寿命延長でランニングコスト削減
スラッジが多く混入したクーラント液は早期に劣化し、頻繁な交換が必要になります。
しかし、ろ過装置を使えば液中の異物を継続的に除去できるため、クーラント液そのものの寿命を延ばすことができます。
交換頻度が減ることで、液の購入費用だけでなく、交換作業にかかる人件費や作業時間の削減にもつながり、ランニングコストの低減に大きく貢献します。
改善効果⑤:製品の仕上がり品質向上
クーラント液が汚れていると、加工中に細かなキズが入ったり、熱伝導効率が下がったりして、製品の精度や外観に悪影響を及ぼします。
ろ過装置で常に清潔な液を供給できれば、切削・研削時の冷却効果や潤滑性能が安定し、製品の仕上がりも均一で高品質に保たれます。
品質のばらつきを防ぎ、信頼性の高い加工を実現するためにも重要な改善効果です。
改善効果⑥:安全性の向上と作業環境の改善
ろ過装置の導入によってスラッジの蓄積や液の劣化を防げば、スリップ事故や設備トラブルのリスクも低減されます。
また、悪臭や液の飛散による不快感も減るため、作業者のストレス軽減にもつながるでしょう。
快適かつ安全な作業環境が整うことで、従業員のパフォーマンスや定着率にも好影響を与える可能性があります。
クーラントろ過装置のおすすめメーカー
クーラントろ過装置を購入したいが、どこで購入すればいいのか悩んでいる方もいることでしょう。
ここでは、クーラントろ過装置のおすすめメーカーとして下記の2社を紹介します。
クーラントろ過装置を購入するメーカー選びの参考にしてください。
濾過精工株式会社

項目 | 詳細 |
---|---|
会社名 | 濾過精工株式会社 |
住所 | 東京都中央区日本橋蛎殻町1-10-1 |
電話番号 | 03-6264-8575 |
公式サイト | https://www.rokaseiko.com/ |
濾過精工株式会社は、クーラントのなかでも精密機械用クーラントに特化した、高性能ろ過システムの開発と普及に取り組んできた会社です。
近年では、精密ろ過装置だけでなく、経験により積み上げたノウハウを活かし、クーラントタンク製造含めたクーラントシステム全体を提案しています。
濾過精工株式会社が提供する『精密クーラントろ過システム』は、スラッジをフィルターエレメントで捕集・除去し、クーラントの初期状態を可能な限り保持する循環式ろ過装置です。
特許を取得した独自の精密で円滑なろ過によって、加工に極めて高度な正確さを要求される分野でも、クーラントの清浄・長寿化に貢献しています。
また、逆洗浄機能も備わっているため、安定したろ過だけでなく、フィルター交換頻度も少ないです。
濾過精工株式会社の提案する製品は、多岐にわたる分野での需要が見込めるでしょう。
また、濾過精工株式会社についてより詳しく知りたい方は、公式サイトに問い合わせをしてみてください。
以下の記事では濾過精工の会社の特徴や商品などを詳しく解説していますので、気になる方はぜひ一度お読みになってみてください。
イースタン技研株式会社

項目 | 詳細 |
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会社名 | イースタン技研株式会社 |
住所 | 神奈川県大和市福田6-9-21 |
電話番号 | 046-268-3131 |
公式サイト | https://www.eastern-tech.co.jp/ |
イースタン技研は1970年の創立以来、ユーザーの立場に立ち、より良い製品・サービスを提案してきた会社です。
設計開発から機械製作・修理メンテナンスに至るまで各部門と連携し、一貫した製造体制を確立することで、高機能かつコストパフォーマンスの高いマシンを提供しています。
イースタン技研のクーラントろ過装置は、ワイヤーカット放電加工機に使用される高性能ろ過フィルターが使用可能です。
そのため、マグネットセパレータでも取り除けない砥石カスや非鉄金属のスラッジも、根こそぎ除去できます。
また、コンパクト設計で場所を取らないため、小規模な工場でも活用できるでしょう。
イースタン技研のクーラントろ過装置を使用することで、あらゆるスラッジを確実に除去し、ワークの仕上がりを向上させます。
以下では、イースタン技研について詳しく解説しているので、参考にしてください。
まとめ
今回は、超硬材の特性から超硬材スラッジの除去方法について解説しました。
超硬材は、炭化タングステンや炭化チタン等の硬質な金属炭化物粉末を、コバルトやニッケル等の鉄系金属粉末で焼結して作られる合金です。
低温時の硬さはもちろん高温時の硬さにも優れており、熱伝導率が大きく耐熱性に優れるなどの特徴があります。
ダイヤモンド砥石を使った研削加工であれば、硬度の高い超硬材も加工可能です。
しかし、超硬材の加工時に非常に微細なスラッジが発生してしまうため、クーラントろ過装置を使ってスラッジを除去するといいでしょう。
スラッジを効率的に除去したい方は、クーラントろ過装置の導入を検討してください。